京町家逍遥遊
2005年 | 商業・店舗
当町家は、美観地区である高瀬川押小路橋詰めの一等地に立地している。もともと小旅館として利用されていたが、長い間空家だったこともあり、外観や内観に老朽化があった。私はこの町家を大人のサロンとして利用するべく『逍遥遊』と命名し、再生に取り組んだ。『逍遥遊』とは荘子の教えで「何者にもとらわれない自由気ままな境地に遊ぶ」という意味である。町家再生にあたっての基本目標は次の3点である。(1)歴史的な高瀬川橋詰めの景観に配慮し、景観ポイントに相応しい象徴的な外観デザインとする。(2)先代の小旅館の小間の雰囲気を残しながらも新旧バランスの取れた和風インテリアの実現。(3)逍遥遊という名前が示すとおり大人の楽しむ空間として隠れ家的機能を持つ。
特に外観全てを真壁づくりの紅壁として個性的でインパクトのあるデザインとした。また、雁行して高瀬川にせり出した外壁には、欄干や飾り窓を新たに設置した。内部は小旅館小間の雰囲気を残しながらも、各部屋の出隅の壁に新たに小窓を設け、屋形船のような雰囲気で高瀬川や一之舟入を眺望できるインテリアとした。